#4 英論文を読んでみるその3 ”Effect of Single vs.Multuple Set of Weight Training :impact of Volume,Intensity,and Variation”

今日は3つ目の論文です。タイトルは”Effect of Single vs.Multuple Set of Weight Training :impact of Volume,Intensity,and Variation”“。日本語にすると「シングルセットとマルチセットの効果:ボリューム・強度・バリエーションの影響」です。今まで要約と言いつつ翻訳だったので、今回こそ要約になるようにトライしてみます。

はじめに

Effects of Single vs. Multiple Sets of Weight TrainingImpact of Volume, Intensity, and Variation
著者:Kramer, James B. Stone, Michael H. O’Bryant, Harold S. Conley, Michael S. Johnson, Robert L. Nieman, David C. Honeycutt, Darren R. Hoke, Thomas P.
雑誌:Journal of Strength and Conditioning Research 11(3):p 143-147, August 1997.

1997年に発刊されたこちらの論文です。James B Kramer. Michael H Stone. Harold O’Bryant この三人の名前は良く出てきます。覚えとかないと…。

今のトレーニング業界の軸になっている内容かなと思います、初めてちゃんと頭に入った論文だった印象です。では。

アブストラクト

これを見れば大凡何の研究かわかりますよね、大事なのでここは丁寧に残しますね。結果をしれれば十分な方はこちらを見て下さい!

この研究は1RMパラレルスクワットにおける、潰れるまでの1セットと、2タイプのマルチセットの効果を調査したものである。被験者は習慣的にトレーニングをしている43人の男性。彼らをランダムに3グループ(SS群、MS群、MSV群)に割り当てた。

  • SS群=8-12レップの中で潰れるまでの1セット
  • MS群=3セット×10レップ
  • MSV群=様々なセット数とレップ数でのマルチセット

相対性強度(初期1RMの%)、強度(挙上重量の平均)、ボリュームロード(=総負荷。レップ数×重量)は14週間にわたって調査した。また、体重・体組成・1RMパラレルスクワットは最初・5週間後・14週間後に評価した。

結果として、体重と体組成における大きな違いは生じなかった。1RMパラレルスクワットは3グループ全てで顕著に増加した。グループによる差は、14週間を通してMS・MSV群はSS群よりも約50%の増加が見られた。

この結果は、1RMスクワットにおいて、潰れるまででないマルチセットが優れた結果を提供することを提案した。

もう少し細かい研究内容についてはこの先を読んでね

イントロダクション

アイソメトリック(等尺性)や動的な強度の増加はウエイトトレーニングに良い影響を与えるが、結局どのトレーニングが効果的に最大筋力を上げてくれるのか、というのが論争になっている。一度神経系が重量に適応すればその後のマルチセットはとても良い刺激となるという研究や、継続的な最大重量の向上を求めるには運動で様々な刺激を与えることが大事だという研究もある。

この論文の目的は、適度にトレーニングしている男性に14週間を通して、潰れるまでの1セットと、強度とボリュームに差をつけたマルチセットとの比較をすることである。

方法

少なくとも自体重のパラレルスクワットはできる趣味で筋トレをしている53人の大学生が被験者となる。彼らは3グループにランダムに分けられた。3つのグループ間で、身体特徴や初期1RMパラレルスクワットの大きな差は無い。様々な理由で10人の取り下げがあった。(つまり残り43人である)。

身長181.5cm±6.1cm
体重79.0kg±10.0kg
43人の身長と体重

3つのグループの分け方と、各グループのトレーニング法の特徴は以下の通り。

  • SS群=16人。潰れるまでの1セットで筋トレ
  • MS群=14人。ウォームアップ後に3セット×10レップで14週間筋トレ。
  • MSV群=13人。様々なセット数とレップ数でのマルチセットで14週間筋トレ。

14週間を通して、月曜・水曜・金曜の週3回のトレーニングを行った。各曜日のメニューは以下の通り。

月曜日と金曜日水曜日
1.スクワット1.ミッドロウ
2.プッシュプレス2.レッグカール
3.ベンチプレス3.ベントオーバーロウ
4.クランチ4.クランチ
セット間の休憩は任意で2-3分セット間の休憩は任意で2-3分
14週間のトレーニングメニュー

ここからは、3つのグループのトレーニング方法の詳細を書いていきます

SS群

  • とても軽い重量で10レップのアップ
  • 各種目を8-12レップ。潰れるorテクニックが崩れたor怪我のリスクがでた段階で終了

重量も8回は出来て、12回以上は出来ない重さの設定である。もし12回以上出来てしまったときは、次のトレーニングで重量を足す。

MS群とMSV群

MS群のトレーニングメニューは以下の通り。

  • ウォームアップ:設定重量の50%で10レップ(メジャーな種目のみ)
  • ウォームアップ:設定重量の70%で10レップ(メジャーな種目のみ)
  • 本番:設定重量で3セット×10レップ

MSV群のメニューは以下の通り。表からも分かるように14週間を通して、ボリュームと強度を調整(主要種目)。

  • 1-5週:それぞれ1,3,3,3&3セット;10,5,5,3&3レップ 
  • 6週目:テスト
  • 7-10週:それぞれ。1,3,3&3セット;10,5,5,&3 レップ
  • 11-14週:それぞれ。1,3,3,&3セット;10,5,3,&2レップ
  • 15週:テスト

上の表の見方が始めちんぷんかんぷんだったのだけど、恐らくこういう意味かと。↓

1週目:1セット×10レップ7週目:1セット×10レップ
2週目:3セット×5レップ8週目:3セット×5レップ
3週目:3セット×5レップ9週目:3セット×5レップ
4週目:3セット×3レップ10週目:3セット×3レップ
5週目:3セット×3レップ11週目:1セット×10レップ
6週目:テスト12週目:3セット×5レップ
13週目:3セット×3レップ
14週目:3セット×2レップ
15週目:テスト
この表は自分のオリジナル

MS群MSV群のメンバーは、月曜日には高重量、金曜日には10%ほど軽めの重量で行った。潰れないようには細心の注意を払った。

SS群はローボリュームとの関連性示すものとして、MS群は相対的に高ボリュームかつ頻繁に用いられる手法として、MSV群はボリュームと強度の周期的なバリエーションを用いたものとして、明確な比較が出来るようなプロトコルだった。

テストについて

テストは0,5,14週間目に実施した。1RMパラレルスクワットを通じてmaximum dynamic strengh(動的最大筋力?)を測定した。また、体重は医療用体重計でTシャツ半ズボン(靴なし)で測定して、体脂肪率はスキンフォールド法(つまむやつ)にて身体の右側7カ所で計測した。

[Data was analysed usung a group×traials(G×T) repeated measures ANOVA ←この一文わからず…]

統計はANOVA検定(複数の群の平均値の有意差を求める統計手段)を用いた。また大事な相互関係についてはスコアを用いて分析したり、Bonferroniの方法(多重比較方の一種)を活用しながらT検定を行った。

統計方法については統計の授業で習った記憶がありますが、抜けまくりなのでいずれまとめたいと思います。

結果

(スクワットのデータは表1)。

  • スクワット、体重あたりのスクワット重量、除脂肪体重あたりのスクワット重量については全てのグループで14週を通して増加
  • MS群とMSV群は14週間を通して、SS群よりも大幅に増加した。
  • 0-5週ではMSは全スクワットの値でSSよりも大幅に増加。
  • 5-14週ではMSV群がSS群よりも大幅に増加
  • SS群はMS群・MSV群と比較して、1RMパラレルスクワットの値は約50%と低めだった。

→このことからマルチセットの方が潰れるまでのシングルセットよりも1RMスクワットの値を上昇させてくれることがわかる。

ボリュームについて

トレーニングボリュームはボリュームロード(重量×レップ数)で推定する。(図1)

  • SS群とMS群との間には常にボリュームロードに大きな差がある(SS群<MS群)
  • SS群とMSV群は2,3,8,9,12,13週目に大きな差(SS群<MSV群)
  • MS群はSS群とMSV群に対して常に大きい差がある(SS群・MSV群<MS群)

とにかく3セット×10レップをやり続けたMS群が常にダントツで総ボリュームが高いと言うこと。

図1

強度と相対強度について

強度は挙上重量の平均値から見積もっている。(図2)

  • SS群とMS群には特に差は無し。
  • MSV群は全期間を通して、SS群&MS群よりも高強度だった。

相対強度は「初期1RMスクワットの何%か」、で求めた。(図3)

  • 特定の期間で、SS群とMS群の間には有意な差があった。(図3)
  • 一部をのぞき、全3フェーズにて相対強度はグループ間で異なっていた(表2)
図2・図3

体組成について

14週を通して体重と体組成の変化は見られなかった。グループ間の相関関係も見られなかったが、MS群における体重と除脂肪体重の増加は、筋力測定に影響しているだろう。(表3)

表3

考察

潰れないでのマルチセットの方が、シングルセットよりも優れていることが分かった。一般的に最大筋力を得るには相対強度がとても大事だと言われているが、本実験では相対強度が低めのMS群において初期フェーズ(0-5週目)1RMスクワット重量の向上がみられた。またMS群は総ボリュームが高いという特徴があった。

MS群は総ボリュームが大きかったことで、練習量が増えて優れた結果をもたらしたのかもしれないが、彼らは元々トレーニングに精通していたのでその可能性は低い。従って、初期フェーズにおいてはボリュームが最大筋力を得るための主な要因となり、筋トレプログラムの初期にハイボリュームの準備期を取り入れることを裏付けられる。

フェーズ1以降では、MSV群が1RMスクワットで急激な伸びを見せた(SS群に対して)。

ウエイトトレーニングは体組成を大きく変化させる可能性がある。本研究では大きな違いは確認されなかったが、これは被験者がトレーニング初心者ではなく経験者だったことが原因だと思う。ベイカーらの研究では、除脂肪体重の増加が筋力増加の主な理由だと示唆している。今回の実験では体組成の大きな変化は見られなかったものの、1RMスクワットの挙上重量は、体重と除脂肪体重によって区別(分類?)できるという事を実質的に比較できたと言える。

今回の1RMスクワット重量の向上は、神経活動(neural activation)の増加と、トレーニング強度に関連していると思われる。80%かそれ以上の高強度トレーニングが神経系の発達には必要というハッキネンらの研究がある。実際、今回のMSV群は特に高強度だったフェーズ2でSS群MS群と比べても明らかな向上が見られた。

初期のハイボリュームと、その後は高強度かつボリューム・強度に変化を付ける工夫、の2つを組み合わせることで優れたトレーニング効果が得られる。この考え方はピリオダイゼーションのコンセプトにも見られる。というのも、ハイボリュームの初期フェーズから初めて、それから変化を付けながら強度を挙げていくという、ピリオダイゼーションの一時期がある。ピリオダイズに関する研究では、トレーニング歴にかかわらず素晴らしい脚や臀部の最大筋力の向上がみられることが多い。

今回の研究の結果、分かったことは以下のことである。

  • トレーニングに通じてる人において、潰れずに実施するマルチセットのトレーニングが優れた1RMスクワットの筋力向上を獲得できること
  • トレーニングの初期フェーズでは、1RM重量の向上において強度よりもボリュームの方が大事なこと
  • 初期フェーズの後は、ボリュームよりも強度やバリエーションのほうが要因として大切だということ

実用化

本実験の結果を実用的に考えると…「トレーニング経験者を相手に初期は相対的にハイボリュームで行うことで初期の最大筋力を得られる、その後のフェーズで高強度(強度やボリュームに変化を付けるよりも)でトレーニングをすることで、筋力の増強を促進できる」ということを提案できる。

トレーニング時間もまた要因の1つになる。トレーニング完遂までの時間を計測していたが、1セットのSS群は約30-40分で、マルチセットのMS群MSV群は約40-50分の時間を要していた。つまりSS群はセット数が少ないぶん早く終わるが効果も減少する。筋力向上が一番の目的だったときに、10-20分の時間短縮のためにセット数を減らすことは逆効果といえる。この議論は、筋力と筋パワーの向上を最大目的としてトレーニングしているアスリートにとって大変大切なことである

アスリートが何のために技術練習の時間を割いてウエイトトレーニングをするのか??トレーニングの目的って、当たり前に大事だけど見落とされがちだよね。

英語の疑問点

p143 dynamic maximum strength のいい訳は。

p144半ば multisegment とは。多関節でよいのか。(multisegment lifting movementより)

p144半ば athletic and nonathletic exercise とは。

疑問じゃないけど今回知った事→present studyは「本研究」という意味で使うこともあると言うこと。最近の研究、という使い方だけだと思っていた。

こういう、単語調べたら勿論普通の意味は出るけど日本語でのS&C用語で上手く当てはまるやつ無かったかなー、というケースがこの論文に限らずいくつかあってプチ困りしています。

翻訳じゃなくて要約を頑張ると言ったけど、これは要約の長さじゃない。。。

実験内容は図とかに書き換えられるけど、考察とかは端折るわけにもいかないし。結局長くなってしまった。

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