お久しぶりです。
大学院受験が一段落したため論文読んでみたシリーズを再開しようと思います。読みたい論文が大変多いため、この場での紹介は最小限にしていきたいと思います。また、論文を読んでこうやってまとめるまでの流れについては今度別のブログで書いていこうと思います。
今回読んだ論文はこちら。
Effects of Grip Width on Muscle Strength and Activation in the Lat Pull-Down
Andersen, Vidar1; Fimland, Marius S.2,3; Wiik, Espen1; Skoglund, Anders1; Saeterbakken, Atle H.1Author Information
Journal of Strength and Conditioning Research 28(4):p 1135-1142, April 2014. | DOI: 10.1097/JSC.0000000000000232
ラットプルダウンでグリップ幅が筋力と筋活動に与える効果について。URLはこちらから。https://journals.lww.com/nsca-jscr/fulltext/2014/04000/effects_of_grip_width_on_muscle_strength_and.35.aspx

背景
ラットプルダウンは背中のコンパウンド種目として最もポピュラーな種目の1つである。一般的に「ワイドグリップの方がナローグリップよりも広背筋を強く活性化させる」という説が知られているが、科学的根拠はそこまで支持されていない。この研究の狙いは、3タイプの手幅におけるプロネイトグリップ(順手)でのラットプルダウンについて、6回反復の最大負荷(6RM)とEMG(筋電図)活動を比較することである。
我々の仮説は「同じ相対負荷を用いれば同様の筋活動が得られる。グリップ幅が広くなるとレバーアームが長くなるため、グリップ幅が広くなると6RM負荷が減少する」というものである。
研究デザイン
16人の健康な(年齢24 ± 4歳、体重81 ± 8kg、身長180 ± 1cm、BAD34.6 ± 2.2cm)筋力トレーニング(経験6 ± 3年)を受けた男性が本研究に参加した。除外基準は、筋骨格系の痛み、運動に馴染みがない、最大努力を減じる可能性のある怪我や病気、テスト中の痛み、または筋力トレーニング経験が6か月未満であった(一人は脱落。)
6RMのラットプルダウンをナロー・ミディアム・ワイド(肩幅の1倍・1.5倍・2倍)の手幅でランダムかつカウンターバランスをとった順番で行った。同時に EMG(上腕二頭筋、僧帽筋、広背筋、棘下筋を対象として)、バーの変位、角度の動きを記録した。各反復は腕が完全に伸びた状態で開始し、バーが顎の下にあるときに完了。各試行の間には 3 ~ 5 分の休憩が与えられた。
統計は、独立変数(グリップ幅)の影響を分析するために、2元配置([3グリップ幅×4つの筋肉]および[3グリップ幅×6RM負荷])反復測定分散分析(ANOVA)を使用して、2つの従属変数(筋肉EMG振幅および6RM負荷)の差を評価。

結果
6RMの強度は、ナローでは(80.3 ± 7.2 kg)、ミディアムでは (80 ± 7.1 kg) となり、ワイド (77.3 ± 6.3 kg; p = 0.02)と比較して大きい結果となった。
グリップの違いによるEMGについては、広背筋(latissimus muscle)・僧帽筋(trapezius)・棘下筋(infraspinatus muscle)は似たような筋活動であった。全体の動作を解析した場合、ミディアムはナロー幅と比べて上腕二頭筋の活性化が大きい傾向が見られた(p = 0.09)。
コンセントリック局面(引っ張るとき・求心性)では、ミディアムの方がナローよりも上腕二頭筋が活動的であると証明された(p = 0.03)。エキセントリック局面(戻すとき・遠心性)を分析すると、広背筋と棘下筋についてワイドグリップの方がナローグリップよりも多く活動していた(p ≤ 0.04)。また、広背筋活動についてはナローよりもミディアムが大きく、上腕二頭筋活動についてはワイドよりもミディアムの方が大きいことが分かった。
ワイドグリップを用いた6RM負荷は、ミディアムグリップ・ナローグリップそれぞれと比較して約4%低いという結果だった。

ラットプルダウンにおける6RM時の上腕二頭筋、広背筋、僧帽筋、棘下筋の運動全体(A)、求心性期(B)、遠心性期(C)の正規化筋電図活動。3つの異なるグリップ幅で実施。値は平均±
SDで示されている
まとめると、ミディアムグリップはナローやワイドと比較していくつかの小さな利点を持つ可能性がある。しかしアスリートやその他筋トレを行うアスリートや一般の人の筋活動の差はあまりないと考えられるため、肩幅の1〜2倍のグリップ幅であれば同様の筋肥大効果を得られるはずである。

つまり、この研究では「ワイドが圧倒的に広背筋に効く」という通説は支持されず、ナロー・ミディアム・ワイドにおける各筋肉の活動の差は小さい。ミディアムに僅かに利点があるという結論ですね。
私の感想
この研究によれば、広背筋の筋活動を増やしたいからと言う理由で、ワイドグリップを選ぶのは違うということになりますね。私が通ってたパーソナルでは、私の運動プログラムで懸垂をやるときにミディアムグリップでやっていました。最初何でだろうと思っていましたが、これは「ワイドよりはやりやすい・ミディアムでも効果は変わらない」といった事を踏まえての判断なのかなと思いました。
また、僧帽筋活動については、ワイドグリップで他よりも僅かに活動量が減ることもグラフから分かるため、僧帽筋に力が入ってしまう事が気になる場合の解決法の1つになるかもしれませんね。